“おんぼろ”マーク、ノーア族のクリアスにして、真実の調和を知るもの、語る。
正直、おいらたちの最初の“お仕事”にしちゃ、できすぎたという印象だ。やっこさん、まさか、緑の影族を一網打尽にしようとしてたとはね!
あのレストランでの死闘はほんとにすごかったよ。ハロルドはおいらをただのドブネズミだとなめてかかった。やかましく騒ぐ口から血のにおいがするあのゲットのおやじは姿をくらましていたし、新月たちは2階にいたから、本当にピンチだったんだけどね。
そこで、“グイッ”とね。
師匠が言ってたんだ。どうせおいらは群れのしんがり狼にしかなれないって。そして、しんがりにはしんがりのやりかたがあるってことも。
そんなわけで今回のことは少し鼻が高いんだよな。
……こんなにはしゃいでたら、「半月がどうして戦績を誇ろうか」なんて、師匠に怒鳴られちまう。それでもやめられないのは多分……。
どこか「やっちまった」と思ってるからなんだろうな。
あのハロルドの心にどんな闇があったのかは結局わからずじまいだ。なぜ、彼は緑の衛族を狙ったのか? 彼はガルゥを憎んでいたのか? なぜ彼はルナティクスであることに居座り続けたのか? ……すべては闇のまま。
おいらは半月の下に生まれて、親の顔なんか覚えちゃいないけど、きっと彼らはおいらに期待してたんじゃないかと思ってる。だって、そうでなければ一介のボーンノーアが13にも連なる唱い掟を覚えようはずがないもの。
今でもたまに掟を引こうとすると、いつの頃かはわからない、幼少時の記憶がふと思い返されることがあってね。よく寝床でたからかに唱い掟をひく英雄の話を聞いてたんだろうね。急に懐かしくなる。そんなときはやっぱり、頑張ろうという気になるもんだよな? おいらに託してくれたんだもの。
じゃあハロルドは? 枯れを愛した人々はどこに? その人たちは彼を救えなかったのか? そしておいらたちも……。
真実を白日の下にできなかったのが、誰のせいなのかはわかってる。闇と光を見通す宿命を背負ったのが、誰なのかも。宴はまだ続いている。ハインリッヒが機嫌を損ねないうちに、戻らないといけないな。このことはおいらと、あなたとの秘密にしてください。おいらはあなたの忠実な目として、命ある限り真実を見ていこうと思います。
それじゃ、またよく晴れた夜に。